小学校で外国語教育が教科化されて、数年が経ちますが、正直上手くいっているのでしょうか?
だいたい、日本全国の教員は、22歳の大学生明けの初任者から、60歳のもうすぐ退職の超ベテランまで幅広いんです。英語からう〜んと離れてしまった大ベテランの先生も3年生以上の担任をもっていれば、必ず英語を教えるんです。無理ありませんか?
ALTがいるって?あくまでアシスタントティーチャーで、主に正しい発音を教えてくれるネイティブスピーカーです。中学校のような専科教員ではありません。あくまで担任が授業を進めます。
小学校では、2020年より3・4年生から正式に必修化されて「外国語活動」が始まり、5・6年生からは「外国語」という“教科”になりました。外国語といっても、それはほぼ英語を指します。つまり、中学校で習う英語の内容が小学校に降りてきたのです。
3~4年生では週1回(年間35時間)、5~6年生では週2回(年間70時間)外国語(外国語活動)が、行われています。
学習指導要領の改訂で、外国語活動が週1回だったのが、週2回となり、高学年の1コマ分増えました。1週間毎日6時間授業になりました(クラブ活動・委員会活動のある日も含む)。
令和3年度から外国語が教科化されたので、令和5年度でもう3年目となります。実際のところ、英語教育の効果は出ているのでしょうか。
今年度の全国学習状況調査では、中学校に英語があり、その結果が出ています。
平均正答率(%) | 国語 | 数学 | 英語 |
全国 | 70.1 | 51.4 | 46.1 |
国立 | 87.3 | 75.9 | 74 |
公立 | 69.8 | 51 | 45.6 |
私立 | 76.1 | 58.8 | 58.9 |
平均正答率が相当低いですよね。出題者がこのくらいできて欲しいという思いと受験者の学力との差に大きな隔たりがあることが分かります(中3の生徒が英語ができないと断言できません。問題の難易度が異常に高かったのかもしれません)。
この受験者である中3の生徒は、小学校で週1回の「外国語活動」を受けてきた子たちです。来年の受験者(外国語が教科化された世代)がどのような点を取るかは注目です。
私は、最近の英語教育は上手く機能していないと思っていますが、もし来年度の全国学力・学習状況調査で、中3の英語の平均点が飛躍的に伸びていたら、この記事を書いたことを全力で謝り、この記事を削除します。
塾関係者や中学校英語教師からの忠告
小学校の教科としての外国語から中学校での英語。うまく連携が取れているでしょうか。
全く取れていないようです。
小中の連携って、年に1,2度合同の研修会をする程度(夏休み中とか)。その内容の大部分は学力向上か生徒指導の内容です。
私自身、教育関係の記事をよく読んだり、YouTubeでの発信に注目しています。そこで、よく「中学の英語がやばい」という記事をよく見聞きします。どんな内容でしょうか。
「現場の塾講師」さんがおっしゃっているように、なんとなく小学校を卒業して、中学校に進学すると「英語の授業が全く分からない」という状況に陥るケースが多いようです。その結果、「英語なんて大嫌い」「英語は全くわけわからん」という状況に陥るのです。
小学校で支援員をしているので、職業体験に来て校庭で児童と戯れている中学生に雑談の中で聞いてみました。
カンタロー「中学校の英語ってどう?」「みんなついていけてる?」
中学生A「みんな苦労してますね。単語とか覚えられないみたいです。塾とかでしっかりやっている人は大丈夫みたいですけど。」
こんな感じです。最初から結構差がついているといった状況のようです。
小学校の英語教育は、「外国語活動」という形で必修化前に導入されました。とにかく「英語(英会話)に触れさせよう」「英語の発音に慣れさせよう」「英語を学習するのは楽しいことだと思わせよう」という感じで、チャンツ(一定のリズム合わせて英単語や英文を発音する)ゲーム、歌、読み聞かせなどで、楽しい雰囲気で授業を行っていました。
学校公開などで、普通に公開してましたので、ご覧になった方もいるのではないでしょうか(私も公開したことがあります)。
2年半前、学習指導要領の改訂により、高学年は週2回の授業となり、私のいた自治体の学校では、ALTがつくのは週1回のみで、もう1回は担任のみで行っていました。
週2時間の学習となったことで、出てくる英単語の量は相当増えました。この単語は取り扱うだけでよく、必ずしも覚える必要はないようです。まあ、出てきたらどんな意味かが分かればいいという捉え方のようです。
一応、英単語のテストなどは行っており、評価も3段階でつけていました。3,4年生は「外国語活動」なので、通知表では、「どんな内容を行い、どのように取り組んでいたか」ということを文章形式の評価として書いていました。
中学校の英語教員からは、学習指導要領の改訂によって、指導内容が膨大になったという意見が聞かれます。
まず、英単語ですが、小学校で「600〜700語」習います。中学校では、中学校は今まで「1200語程度」だったのに、改定後は「1600~1800語程度」に増えました。
つまり中学校卒業生に必要な英単語は「1200語」から「2200〜2500語」に増えたのです。約倍ですよ!凄くないですか?
しかも小学校では、英語は「慣れ親しむ」ことが目標とされている面がありますので、「600〜700語」の英単語をバッチリ覚えてきてはいません。正直スペルを完璧に覚えてはいません。でてきたら何となくわかる程度です。
中1の時点で大きく英語力に差がついている状態なのに、それを補うこともできないくらい内容豊富な教科書です。置いてけぼりになる生徒が続出です。中学校の先生がサボっているわけではありません。上から降りてくる制度や仕組みが悪いのです。
しかも中学校での英語の授業は、先生も英語で話すことが基本です。生徒には会話の中のニュアンスなどで何を言っているのか推察してほしいのですが、「何言っているかわからない、やる気なくなった」と思う生徒が続出します。
「いくら何でも詰め込み過ぎ!」と警告を鳴らす中学校教員は少なくないはずです。
どうすれば、英語教育は上手くいくのか?
では、現状をどう変えれば、英語教育は上手くいくのでしょうか?私の個人的見解4選です。
- 英単語や習う文法の量を減らす(現状キャパオーバー。減らさないと、能力の高い子のみが授業についていけるような格差が広がる)
- 教員は必要に応じて日本語も使用する(もう少し低位の児童・生徒も理解できるように日本語で話す)
- 小学校の高学年は、英語の免許を持った専科教員が教える(小学校でも中学校の英語の免許をもっている先生がいるし、中学校から特別免許で派遣してもらえばよい。そのために中学英語の教員を多く採用すること。)
- 小学校で、英単語を新出漢字のように、しっかりと覚えさせる。
文科省は、外国語の目標を以下のように説明しています。
外国語の目標として「外国語教育の特質に応じた,生徒が物事を捉え,思考する「外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方」を働かせ,外国語による「聞くこと」,「読むこと」,「話すこと」及び「書くこと」の言語活動を通して簡単な情報や考えなどを理解したり表現したり伝え合ったりするコミュニケーションを図るために必要な「知識及び技能」,「思考力,判断力,表現力等」,「学びに向かう力,人間性等」の資質・能力を更に育成することを目指して改善を図った。
文部科学省 HPより
凄く読みにくい難解な文章ですね。教育現場にいると、このような読みにくく、回りくどい文章が横行しています。
簡単に言ってしまうと、「外国語(英語)で自分の考えを含めた簡単なコミュニケーションが取れるように、3つの観点の能力・資質を高める」ようにしたいのです。
そのためには、まず、子どもたちが英語嫌いにならないようにしないといけないですね。もう遅い気がしますが…。
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