多分本当です…。
ただし、「学力低下」というと、「必ずそもそも学力って何を表すのだろう?」とか言ってごまかす人がいるから厄介ですが。
目次
学力は低下しているのだろうか?もし低下しているとしたらどうしてなのだろうか?
隂山先生の新しい著書「小1の不安 これだけ!やれば大丈夫です」(発行 日本実業出版)を読みましたか?あれ、まだですか?是非Amazonか紀伊国屋書店とかで買ってください。ピンクのパッケージです。
隂山先生って本当に素晴らしい教育者です!何が素晴らしいかというと、ちゃんと情報がアップデイトされているんです。昔の話をだらだらと繰り返しているおじさんではないのです!それにやるべき内容をちゃんと厳選して紹介しています。
一時期流行った「100マス計算」の考えはそのままですが、全国を回られて、教育現場を実際に見学しているからこそ、現場の異変に気がついているのです。(今回は算数に絞って話を進めます)
そもそも、小1で習う勉強は基礎中の基礎です。基礎・基本は繰り返しやらないと定着しないので、小1・小2の教科書は薄くして、学習量を減らし、何度も繰り返すというのが昔の方針でした。ところがいまは、小1の段階から難しい問題をやらせて、なぜそうなるかということを考えさせたりします。たとえば「12-3の計算のしかたを考えましよう」と考えさせます。
しかし、多くの子どもは「考える」ことが苦手です。
小1・小2の子どもはどんな難しいことでも「覚えろ」と言ったらあっという間に覚えますが、考えることはむずかしい。そんなの僕からすると当たり前なのですが、その大前提がおかしくなっているのです。
子どもは楽しいことは前のめりにできますが、楽しくないことはできません。考えるなんてことは最初からはできないのです。
だから結果的に、小1の子どもたちは、授業を受けるだけだと自然に「勉強ができない」状態に、そして「できないから嫌い」な状態になってしまうのです。
「中略」
だからいま、できない子が増えている。僕はそう考えています。
「小1の不安 これだけ!やれば大丈夫です」著者 隂山 英男 (発行 日本実業出版)
私が過去に書いた記事の「『思考力』ってどう伸ばすの?」の中で触れた「問題解決型学習」の良くない点の影響がもうすでに全国の現場に出ていると思います。
隂山先生は小1の算数で必要なのは「計算だけ」と言い切っています。私が記事の書き始めで影響を受けた方を3人挙げた時、「公文 公さん」と「隂山 英男さん」を挙げたのも、学力の本質を分かっているからです(すみません、偉そうに…尊敬しています)。
「基礎は基礎だから詰め込むこと」「子どもは暗記は得意だが、考えるのは苦手」「繰り返しやらなければ習熟しない」「適切な内容を学習すれば、誰でもできるようになる」という学力向上のための基本的な考えをもっているからこそ、日本の学力向上に大きな影響を与えたのだと思っています。
4人の子どもたち全員が東大卒医師となった「佐藤ママ」も現在の小学校の算数教科書を見て、「子どもにとっては考え方から入るのはかえって難しいのではないかと思います。」「私は、理論は置いておいて、まず問題に慣れるのを先にするといいと考えています。」とはっきり言っています。(以下、元の記事です↓)
https://news.yahoo.co.jp/articles/9c9e15b52c32a8f835dec3552b2aa9f3cf29cf3d
何度も言うようですが、文科省は「これからは暗記力でなく、思考力を高めないといけない」という思いで、現場に「考えさせる」ことをやんわりと命じてきました。その結果が学力低下となって表れています。現場の教員は、「考えさせること」=「思考力の向上」を信じて疑いません。
しかし、業者テストで点が取れないからと、単元の最後(テスト前)に「習熟の時間」や「補習の時間」をとって補うのです。その先生方の影の努力で何とか学力を保っているのが現実です。
20年教職に就いていた立場からはっきり言います。感覚的には10年、20年前よりも平均的な学力は明らかに落ちています。思考力を上げようとして、逆に落ちています。暗記力も読解力もすべてです。学習塾や業者によるオンライン授業等のおかげで、今の学力で収まっているのです。そのような別の教育機関がなかったらもっと落ちています。
学力を向上させるためにはどうすればいいですか?
1 算数での問題解決型学習を改め、基礎基本を徹底する
算数は、今まで先人の優秀な方々が得てきた知識や技能を効率よく習得すべきです。基礎的な内容なのに、変に「どうしてそうなるのか」なんて考えなくてもいいんです。
もちろん、考えてはいけないわけではありません。問題を解く過程で、そのような疑問をもつ子は、どうしてなのだろうかと考えるでしょう。そして、考えたり、調べたり、聞いたりして解決するでしょう。その積み重ねが思考力を高めるということです。
すべての児童がそのような思考力を高めることを強要するのではなく、すべての児童が簡単な計算を高い正答率で解くことが優先すべきなのではないでしょうか。
2 担任の「空きコマ」を増やすため、専科教員の配置を増やす
担任の「空きコマ」を増やすのは、担任を楽にすることが大切な目的ではありません。あくまで、質の高い授業をするためです。
最近、採点をICTの力で自動化するような流れがありますが、個人的にはお勧めしません。国語や算数などは、その教科を担当した教師がすべきだと思っています。なぜなら、児童の理解度をチェックすることができるからです。同時にその単元の指導の仕方が良かったかどうかの自己採点でもあるのです。
採点は確かに時間がかかり、時間の確保も大変です。内緒で持ち帰っている教師も結構いるはずです。特に子育て世代では。
その場合、他の人にやってもらうより、その担任の「空きコマ」(教材研究)の時間を確保すべきなのです。そこで採点をし、児童の理解度と自分の授業が適切であったかを確認するのです。そのため、専科教員を増やして担任の授業を担当する時間を減らさなければなりません(人手不足で難しいとは思いますが…)。
やはり学力低下を食い止めるのは、財政の助けが必要なのです。
3 学校の授業の中で問題を多く解く(宿題ではなく)
算数に関して言えば、以前問題解決型の学習によって、練習(適用)問題を解く時間が少なくなっていると言いました。主問題を解くために「なぜだろう」「どうしてかな」と無駄に考える時間をつくるのではなく、主問題の解き方を最初に教えてしまい、どんどん練習問題を解かせるべきだと思います。
その時間の中で身に付けた知識や技能を駆使して、正答を連発する。それこそがミニ成功体験だと思います。
よく副教材を宿題にするパターンがありますが、それも授業中に行うのがベストです。授業中に多くの問題を解く中で、疑問を抱き、解決する経験が必要です。授業中なら板書も残っているし、先生や友だちにも聞けます。宿題も必要だというのなら、タブレットに「ドリルパーク」(ベネッセさん)などの自己採点できるドリルがあるので、宿題ならそちらの方がいいですね。
まとめ
今回は、隂山先生の「小1の不安 これだけ!やれば大丈夫です」(発行 日本実業出版)から、学力低下について考えてみました。あくまで個人的な見解ですが、隂山先生も似たような考えをもっていてくれてうれしかったです。
算数は、同じような内容が少しずつ難解になりながら繰り返し出てくる教科です。繰り返し出てくるから大丈夫と思ったら大間違いです。とにかく積み重ねが大切なので、一度理解不十分のところがあると、どこかでつまずきます。そして算数・数学嫌いになります。
つまずかないようにするためには、すべての児童に基礎・基本をしっかりと身に付けてもらわなくてはなりません。そのために、「思考力をつけさせよう!」なんて思わずに、有無を言わせず、すべての児童に最低限の計算力をつけさせることが大切です。
それこそが、公教育の役割ではないかと思う今日この頃です。
※国語に関しては、また後日記事にします。
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