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最近、給食を作っている会社が倒産したり、給食が美味しくなくなったりしたという記事を見かけたけど、給食の質は低下したの?
この問題はかなり難しい問題で、質が低下したかどうかは、その自治体によりますね。うちの自治体は大丈夫です。関係者の努力の結果、低下しているとは思えません。十分美味しいです!
https://news.yahoo.co.jp/articles/9d84775a5d6424728213fb27f4b0f5ed32c751e3
それで、この記事。この給食のメニューではきついですね。これじゃあ学校へ行くのも嫌になってしまいます(子どもは給食のメニューを楽しみにしています)。
地域によっては、学校給食も物価高のあおりを受けて、質が低下しているところもあるようで、残念です。しかし、私が住んでいる地域ではそのようなことはありません。十分に考えられた美味しい給食が毎日出されています。
給食の質が低下しているのが事実ならば、市に要望を出して、補助を出してもらってでもしっかりとした給食を出してもらうべきです。これから成長していく子どもには美味しくて栄養豊かな良い食事を与えたいですね。
給食を食べ続けてきたから思うこと
私は小学校で特別支援教育支援員をしているので、現在お昼はたいてい学校給食をいただいております。昨年度まで、約20年間以上教職員(臨時採用含む)だったので、ずーっと給食をいただいております。
年間180日くらい学校給食があるので、だいたい180食分を20年以上いただいたことになります。1日3食を年間365日食べているとして、1095食。そのうち、180食を給食で賄っているので、私の体は約16%くらいは給食でできていますね。
そのため、給食については結構詳しいです(別に自慢でも何でもありません…)。
学校給食の作られ方には大きく分けて3つあります
- 自校方式(学校内に給食室があり、校内で給食を調理する)
- 給食センター方式(いくつもの学校の給食を給食センターで調理し、専用の配送トラックで各学校へ配食する)
- デリバリー方式(民間の給食業者に依頼し、食缶や弁当箱で運んでもらう)
私は、①自校方式と給食センター方式しか経験がありませんが、長男の通っていた幼稚園では③のデリバリー方式を採用していました。
私の個人的な感想ですが、「①自校方式の給食」が一番美味しかったです。ただし、条件があって、その担当栄養士が優秀(厳しい)人であること。栄養士がメニューや最終的な味のチェックをしていたので、こだわりが強い栄養士さんですと、給食が美味しいですね。
最近は「②センター方式」ばかりですが、こちらもちゃんと栄養士さんがメニューを考えていて、結構おいしかったです。担当していた栄養士さんと話したのですが、センター方式のメニューを考えるのには結構制約が多いらしく、自校方式の学校に赴任できる時には喜んでいました。
給食費を抑えるため、作業効率を高めるためには「センター方式」が今後スタンダードになっていくものと考えられます(十分美味しいので大丈夫です)。
私が正採として赴任した学校が5校ですが、どの学校の給食も満足のいくものでした。
最近は物価高で、同じ食材でも一昔前よりも随分価格が高騰し、どの栄養士さんも苦労していると聞きます。なかなか給食費は上げられませんが、子どもには満足のいく給食を食べさせてあげたいですよね。ですから、思い切って給食費を値上げするとか、市からの補助金を増やすとかを考えてもいいと思います。
ちなみに私の自治体の給食費は1食250円を切っています。必ず200ml入りの牛乳がつくことを考えるとかなり安いですよね。これは、地方自治体が施設運営費、人件費などを支払い、給食の食材費のみを家庭に請求しているからです。
そのことを含めて給食って、実は法律によっていろいろと決められていること知っていました?
給食に法律?「学校給食法」って何?
「学校給食法」と言うんですが、その中の「学校給食の目標」に「第二条 学校給食を実施するに当たっては、義務教育諸学校における教育の目的を実現するために、次に掲げる目標が達成されるよう努めなければならない。」とあるんです。
ちょっと長いですが、目標を7つ挙げてみますね。(「学校給食法」より引用)
- 適切な栄養の摂取による健康の保持増進を図ること。
- 日常生活における食事について正しい理解を深め、健全な食生活を営むことができる判断力を培い、及び望ましい食習慣を養うこと。
- 学校生活を豊かにし、明るい社交性及び協同の精神を養うこと。
- 食生活が自然の恩恵の上に成り立つものであることについての理解を深め、生命及び自然を尊重する精神並びに環境の保全に寄与する態度を養うこと。
- 食生活が食にかかわる人々の様々な活動に支えられていることについての理解を深め、勤労を重んずる態度を養うこと。
- 我が国や各地域の優れた伝統的な食文化についての理解を深めること。
- 食料の生産、流通及び消費について、正しい理解に導くこと。
分かりました?学校給食は完全に教育、つまり食育なんです。ただ、児童・生徒のお腹を栄養豊かに満たせばよいものではないのです。
小学校では、やたらと完食指導しますよね。最近は減ってきたと思いますが。あれもこの食育がイメージとしてずっと残っているからかなと思います。
新型コロナウイルスの影響で、黙食がずっと行われてきましたが、今もなお黙食を続けているところが結構あるようです(うちも黙食です)。③の明るい社交性の精神を育てるためにも、早くやめた方がいいですね。
しかし、「教員の働き方改革」の一環として、給食指導はもうあまりやらなくてもいいのではないかと思います。やはり、食事の仕方なんて学校で教えるものではなく、毎日の家庭の食事の中で教えていくべきだと思います。
給食費は保護者が負担しなければならないの?
この給食費の負担は保護者が負うことになります。
以下、学校給食法より抜粋です。
(経費の負担)
「学校給食法」 文部科学省HPより
第十一条 学校給食の実施に必要な施設及び設備に要する経費並びに学校給食の運営に要す
る経費のうち政令で定めるものは、義務教育諸学校の設置者の負担とする。
2 前項に規定する経費以外の学校給食に要する経費(以下「学校給食費」という。)は、
学校給食を受ける児童又は生徒の学校教育法第十六条 に規定する保護者の負担とする。
しかし、都内の小・中学校では区が給食費の負担を全面的にサポートし、給食費を回収していない学校もあるそうです。
https://www.nhk.or.jp/shutoken/newsup/20230713c.html
私もその方がいいと思います。給食費無償化の流れは今後進んでいくと思われます。その理由は3つあります。
- 保護者の経済的な負担が軽減(1か月5000円弱支出が減ります)
- 学校も給食費の回収のための労力がなくなります(未払いの保護者への催促を行わなくてもよい)
- 税金投入なので、物価高にも対応可能である(給食費も上げやすい)
学校給食は食文化について、家庭では教えきれないことも教えてくれますよ!
学校給食ってすごいです!家庭で教えきれない食文化に関しても教えてくれます。この点は、本当に素晴らしいです。
食料の旬や季節の行事との関連について
学校給食法の目標「④食生活が自然の恩恵の上に成り立つものであることについての理解を深め、生命及び自然を尊重する精神並びに環境の保全に寄与する態度を養うこと。」に関してです。
日本にははっきりとした四季があります。そのおかげで、季節ごとに様々な食材が食卓に並びます。学校給食でも、旬のものが美味しく栄養価も高いことで、メニューに積極的に入れるようにされています。
学校が発行している「給食だより」を一度しっかり読んでみてください。「旬の食べ物」が紹介されていませんか?
例えば、今(10月下旬)ですと、ハロウィンですよね。ハロウィンといえばかぼちゃ。かぼちゃの紹介や、ハロウィンという行事の成り立ちなどが紹介されることが多いです。かぼちゃのスープなんかメニューによく出てきますね。このことによって、児童がハロウィンとかぼちゃの繋がりを初めて知るケースもあるわけです。前任校では給食委員会の児童が、放送で給食のメニューについて紹介してました(原稿は栄養士さんが作成)。
普段、どれだけの家庭が旬の食べ物について教えているでしょうか。そんなに多くはないと思います。それを毎年毎年学校給食は教えてくれているのです。結構有難いと思いませんか?少なくとも私自身、給食で知った食の情報は多いです。
地産地消の推奨について
学校給食法の目標「⑥我が国や各地域の優れた伝統的な食文化についての理解を深めること。」に関してです。
学校では、地産地消(その地域で作られた食材をその地域で消費すること)が推奨されています。そのため、地元の食材がメニューの中に使われて、「給食だより」などで紹介されます。
子どもたちは3年生の社会科で、住んでいる地域のことについて学びます。学校給食はその地域で採れる野菜や畜産物、海産物など、地元のことに親しみを感じることができる素晴らしい教材となります。
例えば、トウモロコシやそらまめなどの野菜が採れれば、1,2年生にその皮むきを手伝ってもらうことがあります。手間を考えれば、調理委員さんがさっとやってしまった方が早いのですが、食育として手伝ってもらいます。実際にした処理を手伝った食材、しかも地元で採れたものが、当日やその翌日に給食として出されれば、身近に感じていつもよりよく食べるでしょう。
こうしてさりげなく、「教育」として給食が活かされることがあります。まさに生きた教材ですね。
今まで見たことない料理がでることがある!
学校給食法の目標「⑦食料の生産、流通及び消費について、正しい理解に導くこと。」に関してです。
学校給食には、今まで食べたことがない料理が出されることがあります。栄養士さんの趣味です(半分冗談です)。これは本当です。私自身、学校給食で人生で初めて食べたことがあるものがいくつもあります(3月頃に出された「せとか」は初めて食べてその美味しさに感動しました)。
日本の食文化って、日本が世界に誇れるものの1つです。日本は伝統的な食事を極めることもしますが、外国から入ってきた食事を日本人好みにアレンジしてさらに美味しくすることも得意ですよね。
学校給食でも、外国の料理が出ることが結構あります。外国の食文化を紹介するのです。
例えば、メキシコ料理が由来とされる、アメリカ南部テキサス州の郷土料理「チリコンカン」。これって昔からありました?今は普通に学校給食のメニューに入っています。全く辛くなく大豆とひき肉がたっぷり入って、栄養価も高く子どもに人気のメニューです。
韓国料理も、フランス料理も、イギリス料理も、イタリア料理も、中国料理、アメリカ料理も学校給食のメニューに入ってきています。レシピはみんな栄養士さんが考えます。「給食で世界を旅しよう!」なんて素晴らしいキャッチコピーで1年間を通して外国の料理をメニューに取り入れていたこともありました。ホント有難いです!
このように「日本には世界中から美味しい食べ物や料理が集まっているんだ!」ということが給食を通じて理解できるようになっています。
まとめ
- 学校給食の質は、関係者の努力で低下していないと思われます(ただし、地域による)
- 給食はその学校内で作る「自校方式」が理想的だが、給食費を抑えることや作業効率を考えると「センター方式」になっていくことがスタンダード
- 学校給食は「学校給食法」によっていろいろと決められており、その材料費のみを保護者が負担するため、比較的安い金額で済んでいる
- 学校給食はまさに食育で、食に関していろいろなことを教えてくれる
このように学校給食はとてもいい教材なんです。子どもは見たことも食べたこともない料理を、全く食べない傾向があります。しかし、一口でも食べてみて、新しい食の世界をのぞいてほしいものです(学校では苦手なものでも一口は食べるよう促します)。