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昨年度の不登校の児童・生徒が過去最高になったと聞きました。本当に不登校児は増えているのでしょうか?
間違いなく本当です!1年間で約30万人の児童・生徒が学校に行かない、行けない状態にあるそうです。
2022年度の小中学校における不登校者数が過去最多の29万9,048人となったことが、文部科学省が2023年10月3日に公表した調査結果から明らかとなったそうです。
令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について(文部科学省ホームページより)
不登校に関しては、以前「現在の教育問題ってどんなことがありますか?」という記事で扱っていますので、内部リンクを貼っておきます。
不登校児童・生徒の総数が約30万人としても、多いのか少ないのかイメージが湧きませんよね。具体的に小学校で500人規模の学校なら、8人から9人が不登校ということです。中学校で500人規模の学校なら、30人が不登校ということです。
結構多いのではないでしょうか。仮に、500人規模の小学校で学級数が18クラスあったとします。すると、だいたい2クラスに1人は不登校児童がいるということです。中学校なら1クラスに1人から2人は不登校生徒がいるということです。昔のイメージとはだいぶ違いますよね。
もはや不登校児童・生徒は普通にいます。珍しくありません。
学校に行けない、行かない理由は何でしょうか?
学校に行けない、行かない不登校には大きく2つあります。
①積極的不登校
②消極的不登校
それによって、理由は随分違ってきます。
①積極的不登校は、学校に行くことに価値を見出せず、自宅で勉強したり、独自のコミュニティーに参加し、人間関係能力を培うことができている児童・生徒です。ギフテッドの子もこの中に入るのでしょうか。ほとんど心配いりません。
②消極的不登校は、学校には行きたいけど、嫌な気持ちが先行してしまい、どうしても行けない。そのため、同世代の子たちとのコミュニケーションが取れなくなっている児童・生徒です。サポートが必要です。
文部科学省の不登校調査でも理由を挙げています。(文部科学省 ホームページより)
不登校の要因と言っても、多分本人もいろいろな要因が混ざっていて、はっきりとコレが原因とは言いにくいのではないでしょうか。この調査は報告者が多分担任の先生で、それを生徒指導の主任さんがまとめて報告しているのだと思います。一応こんな理由かなと思って報告しているのでしょう。
「無気力・不安」が過半数の要因ですが、あくまで参考程度に考えておいてよさそうです。「どうして無気力になってしまったのか?」「どうして不安になるのか?」などと、一人一人に聞いてみても、「何となく…」としか答えられないのではないでしょうか。
我が子育ての師匠、佐々木正美先生の「子どもへのまなざし」(福音館書店)のP228にこう書かれています。
不登校の子どものなかには、自分の考えや自分の気持ちを、自由に表現することができない子どもが少なくありません。コミュニケーションがうまくいかないのです。人とのまじわりに、おそれやストレスを感じる、苦痛を感じるのです。だから保健室へのがれたり、自宅へ閉じこもってしまうのです。あるいは人間関係のないところだけを歩いているとか、人と関係しなくていい雑踏のなかを選んで歩いているのです。彼らは静かな自然のなかへもあまりいけないのです。人との関係を求めているのですが、映画館にいったり、歩行者天国を歩いたり、知っている人のいないところを歩いているのです。まわりに人がいないと不安なのです。たいへんな不安だし、たいへんな苦痛だと思います。そのくせ人とまじわれないのです。
「子どもへのまなざし」 著者 佐々木 正美 発行(福音館書店)
この書籍の初版は1998年7月なので、随分前に書かれた書籍となります。ですから、少し現代の不登校と違う見解があるかもしれません。しかし、当時多くの不登校児と関わってきた佐々木先生の考えは参考になると思います。同年代の児童・生徒とのコミュニケ―ションに不安があるというのが主な理由かもしれません。
佐々木先生は、まず家庭内でしっかりとやすらげないといけないと言っています。それを土台として、子ども同士のやすらぎのグループを小学校の低学年までに十分経験しておくことが大切だと言っています。その経験は昔の子の方がうんとしやすかったそうで、現代はなかなか難しいようです。
子どもが不登校になったら、困ることは何ですか?また、その対策はありますか?
困ることと言えば・・・
①児童の居場所
②児童の学力
③児童が学校で得られるメリットがなくなること
④共働きのどちらかが、子どもの面倒を見なければならなくなる(場合によっては退職?)
くらいでしょうか…。
①児童の居場所
不登校になると、家でずーっと過ごすことになります。すると、息が詰まる感覚がありそうです。一方、平日の日中なら、同年代の子どもたちはほぼ学校にいます。不登校の子どもにとって肩身が狭い思いをするのは容易に想像できます。保護者は気分転換に公園やショッピングセンターに連れて行くかもしれませんが、どこかストレスがかからない程度の居場所が、家以外にできるといいと思います(定期的に通える習い事とか)。その際に、生活圏が少し離れた場所がおすすめです。知っている子に遭遇すると嫌な思いをするからです。
②児童の学力
これも保護者としては心配になるのではないでしょうか。塾などの習い事をさせようと思っても、習い事のある時間帯は他の児童・生徒も通える時間で、生活圏が離れた少し遠くの塾などに通わせることになるかもしれません。家庭教師を頼むケースも少なくはないのでしょうか。(以下広告あり 小学1年生〜高校3年生対象)
【ティントル 不登校専門オンライン個別指導】不登校になった際の学力を保つ手段 お勧め4選(個人的見解です)
- 学校で一括購入している漢字ドリルと計算ドリルを毎日少しずつ行う(書き込みがベストですが、計算ドリルはスペースがないので、しかたがなくノートに。これは絶対にやった方がいいです 逆にこれだけでほぼ大丈夫)。
- オンライン学習・通塾・家庭教師など外部の力を借りること(メリハリがつきます)
- 学校の業者テスト(カラーテスト)を1部購入し、自学後に定期的に行う(担任の先生に相談して、実施時期を聞く 採点は先生にお願いするか、答えをもらって保護者が行う)
- 市立図書館に通って本を読みまくる(読書で読解力を鍛え、さらに暇つぶしになります)
①は必須で、②は可能であれば。③④はおすすめです。業者テストは低学年なら国語と算数を。中学年以降なら理科と社会も。高学年は家庭科や外国語(英語)も必要かもしれません。
業者テストは、教科書をよく読んでから30分くらい時間を測って行うのがいいと思います。もし、テストで合格点が取れなくても大丈夫。必ず答えがあるので、答えを見て見直しをします。慣れてきたら、どのような問題が出題されるかが見えてきます。このテストの出題傾向と対策は今後必ず必要となってきますので、不登校の間でも慣れておくのがベターです。
③児童が学校で得られるメリットがなくなること
児童が学校に通うメリットは「友達と学び合うこと」です。
小学校時代にたいせつなことは、親や先生や、そのほかの大人からものを学ぶだけではなく、それ以上にたいせつなことは、友達からものを学ぶことなのです。友達にものを教えることなのです。友達との会話のなかに入っていくことなのです。友達と遊びやサークルなどの活動に熱中することなのです。
「子どもへのまなざし」 著者 佐々木 正美 発行(福音館書店)
佐々木先生は「友達が多いほど健全に育つ」と言っています。学校は勉強をするところだとよく言いますが、実際は授業以外の活動や休み時間に最も価値があるとおっしゃっています。
この友達との関わりがなくなってしまうのは辛いですね。これは子供の成長を考えたら、学校とは別の、同年代の子どもと関われる場所が欲しいです。ママ友やパパ友にお願いして、お友達と週末に一緒に遊ぶとか、どこかに出かけるとか行動を起こした方がいいですね。家族も大切ですが、学童時期になったら、友達との関わりも非常に大切です。
市町村の子育て支援センターに相談するとか、公共の相談場所があるので、連絡を取るといいと思います。子どもは学校に行かなくても構いませんが、学校で得られるメリットを享受する場所を用意してあげることが必要ですね。
④共働きのどちらかが、子どもの面倒を見なければならなくなる(場合によっては退職?)
この問題は切実です。小学校低学年の児童が「学校に行きたくない」となれば、誰かがその子の面倒を家でみないといけません。ずっと家の中にいるのですから。すると、両親のどちらかが休職、あるいは退職しなければなりません。最低でもパートくらいしかできませんよね。これは共働きの家庭にとってはかなり辛いことです。でもそうせざるを得ません。
子どもに本当のやすらぎの場と必要な学力やコミュニケーション能力を身に付けさせ、学校復帰につなげられるといいですね(不登校が絶対ダメというわけではありません)。
ちなみに文部科学省は「COCOLOプラン」という不登校対策を出しています。ご存じでした?この中「主な取組」の中に「多様な学びの場、居場所の確保」という項目があります。
この中の「フリースクールとの連携強化」というところに、不快感をもった滋賀県東近江市の小椋正清市長の発言が波紋を呼んでます。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20231025-OYT1T50243/
個人的には「時代錯誤な考えだな」と思いますが、信念をもって発言されていることは素晴らしいと思います。先ほど述べましたように、子どもは不登校になると、友達と関わる別の居場所が必要となります。その1つがフリースクールだったとしても何ら問題はありません。子どもの可能性を環境の不整備によって潰してはなりません。
子どもが将来不登校にならないようにするには、何をしておけばいいですか?
これはかなり難しい問題です。佐々木先生の見解に耳を傾けましょう。
不登校になった子どもは、その多くが、家庭の内外での人間関係に共感的な感情の深まりを実感する体験か乏しいように思います。その原因は、幼少期から親子一緒に親戚や友だちの家を親しく訪問しあったり、路地で友達と遊んだり立ち話をしたりするような、気を許した交わりをする機会が減ったことが、大きいのではないかと思います。そのうえ私たちの多くは、少ない数の子どもと、親子二世代の核家族で生活しているのです。子どもたちは、親に付き添われて旅行したり遊園地で遊んだりすることは何度も経験していますが、親のいないところで他者と関わる経験は不足しているのです。
私は、不登校など、人間関係の場での不適応は、このような家族の生活スタイルが大きな一因だと考えています。親が気楽に生きようと考えて、家庭の内外で他者と深く付きあわす、共感的な関係をもたないことで、子どもたちは思春期の苦悩を共感し乗りこえる仲間とも交わりにくくなっているのです。
「はじまりは愛着から」 著者 佐々木 正美 発行 福音館書店
「消極的不登校」が人間関係をうまく形成できないことが原因とすると、小学校入学前に、家族以外の子たちと深くかかわるような経験をたくさん積んでおくことがよさそうです。
このことは一見簡単そうで、実はかなり難しいと思われます。最近は、お友達通しでお泊りをし合うなんてしないですよね。もし可能であれば、親戚関係でお泊り会をするとか、一緒に宿泊を伴うキャンプ、スキー・スノーボードなどの屋外イベントに出かけるとか、家族の輪から一歩踏み出すような体験を何度もさせたいですね。もちろん、ママ友、パパ友の家族との少し深い関わりでもいいかなと思います。
まとめ
- 不登校児童・生徒は確実に増えている
- 学校に行かない・行けない理由は様々だが、「他人とのコミュニケーション不安」が多い
- 不登校になると、本人・家族が困ることが多いが対策は可能
- 不登校にならないようにするには、家族以外の人との深い関わりを経験するとよい