教育

図工って絵をかいたり工作をしてたりするだけなの?

図画工作って、絵をかいたり、工作をしているイメージだけど、実際は何をしているんですか?

「図工」って教育関係者以外の人からは誤解されていると思います。図画工作は絵を上手く書いたり、上手に工作したりする技能を高めるための芸術科目ではなく、自分の考えや想いを絵や形にして表現する情操教育です。

図工って、本当に勘違いされているんですよね。図工は、図画と工作ということで、芸術関係の技能を高める教科だと思われています。しかし、実際は情操教育なんです。

情操教育って何ですか?という質問が出てきそうなので、答えます。

情操教育とは、感情や情緒を育み、創造的で、心を豊かにするための教育です。私はざっくりと「自分が描きたいもの、作りたいものを実際に描いたり作ったりすることで、心がより豊かになる教科だ」と思っています。

文部科学省が出している学習指導要領の図画工作の目標は次の通りです。

「表現及び鑑賞の活動を通して,感性を働かせながら、つくりだす喜びを味わうようにするとともに、造形的な創造活動の基礎的な能力を培い,豊かな情操を養う。」

「つくりだす喜びを味わえる」図工は楽しいです。子どもたちも非常に楽しみにしている教科だと思います。教える側からしても何となくワクワクする教科だと思います。ただ、活動前の準備が大変なことも多く、苦手意識や「めんどくさいな」と感じている先生もいます。

また、子どもは思うまま、自由に絵を描くことで、ストレスを発散できるようです。絵を描いたり、友だちの絵を見たりすることで脳にいろいろな刺激が与えられ、子どもの感情表現を豊かにしてくれます。

でも、実際はコンクールとかで選ばれるために、技能は必要じゃないですか?

技能はあくまでも表現の幅を広げるためのもので、技能を高めるために図工を一生懸命にやるものではないと思います。

教育現場では、実際に表現活動の幅を広げるための技能を教えます。特にコンクールに入賞するためにというわけではありません。

例えば、絵の具の使い方、はさみ、カッター、金づち、ノコギリなどの使い方、彫刻刀の安全な使い方、絵を描く際の注意点(遠近法、下描き、色の重ね方など)を授業の単元内容の最初に教えます。

ただし、あくまでも基礎的な内容で、どのように描くのか、作るのかは個人の自由になっており、そのことこそが大切なのかと思います。

図工の教科書を一度ご覧になってください。「こんなことをやって何になるんだ!」という内容が結構多いです。例えば教室中に新聞紙を手でちぎったものを飾りまくるとか、段ボールで教室内でトンネルや小屋を作ったりとか、スズランテープを部屋中にかけまくるなど、様々な活動があります。

教員自体も「こんな活動をして何になるんだろう?」と思いながら行っているケースもあります。

昔のように、風景を写生したり、版画を彫って印刷したり、粘土で何か立体物を造ったりという活動ばかりではないのです(高学年には学校の風景や様子を写生する活動があったような気がしますが)。

日常にある商品のパッケージ材料や自然の中にある材料を拾って集めて何か造形物を造ったりします。環境のことやリサイクルのこと、自然物のことなど様々な内容が図工の中に盛り込まれ、考えさせてくれます。最近よく耳にする「SDGs」にも関わっています。

作品作りのための材料を求められたら、できる限り協力してあげてください(例えば商品の箱をいっぱい集めてくるとか)。

コンクールなどに選ばれるためにはどうすればいいですか?

必要なことは、①絵を描く経験の量、②絵本などの絵画を鑑賞する経験の量、③才能、④その時点での知能(認識能力)です。

何となく、コンクールに子どもの作品が選ばれると楽しいですよね。
実際に子どもの絵を見ると、優れた作品はすぐに分かります。そして、選ばれる子は常に同じような子たちです。だって、平等に見ていったら作品の差は一目瞭然ですから。描いた子の名前を見ずに選んでも、たいていは同じような子が選ばれます。これは真実です。

学校では、絵画を掲示する際にコンクールに出品する作品は写真に撮って、カラー印刷したものを掲示することが多いです。その際に選ばれたことが納得されるように選ばなければなりません。「明らかに下手なのに、何で選ばれたんだ?」と思われてはダメなんです。

ただ、絵の解釈は難しいので、コンクールで審査する人の主観が入りやすく、最後の最後は運と言えるかもしれません。

一応コンクールで選ばれるようにするために必要なこと4選を挙げておきます。

①絵を描く経験の量

幼児からたくさんのお絵描きをしている子は、やはり絵が上手です。まあ単なる経験値の差ですから、そのうち差は少なくなっていくでしょう。

私の子どもには100均で買ったスケッチブックを常にストックしておき、切らさずに与え続けてきました。クーピーペンシルやクレヨンはリビングに用意し、時間があれば絵を描かせていました。今では絵を描くことは大好きです。絵も得意な方だと思います。

②絵本などの絵画を鑑賞する経験の量

絵本やジグソーパズルなどの絵画を幼いうちからたくさん見ておくと、絵のレイアウトや色彩感覚が磨かれます。美術館へ行って有名な絵画を見るのもいいかもしれませんが、しかるべき時期になったら連れて行ってもいいかもしれません。

おすすめはやはり絵本です。子どもは文よりも絵をよく見ています。絵本には様々な技法の絵があり、非常にバラエティーに富んでいます。ぜひいっぱい読み聞かせしながら絵本を与えてください。

③才能

これは生まれた時点で差があります。もう仕方がないことです。

④その時点での知能(認識能力)

頭の良さも実際に図工の絵には表れます。想像力、認識能力は絵画にしっかりと表れますね。

その他に、図工の作品を見て思うことはありますか?

絵画は描いた人の心の中を表します。ですから、子どもの心の中にある寂しさ、不満、不安、怒りなどが表現されることがあり、少し注意が必要です。

この色を多用した作品を描いていたら少し心配かも・・・。

・・・不安や恐怖が強く感じられている状態です。また、外に出せない感情を内にためこんでいるかもしれません。

・・・色が濃く塗られたりする荒い使い方をする場合は、愛情が枯渇していたり、親に対する不満を持っている可能性があります(以前うちの子にもありました。攻撃的な絵でした)。

・・・自分の感情を出したいけれど、出せずに我慢をしているかもしれません。

・・・多めに使うときは疲れていることを表している可能性があります。

この色を多用していても心配はいりません・・・。

黄色・・・自分を見て欲しいという気持ちが強かったりしますが、明るい気持ちだったり、楽しい気持ちだったりする場合が多いです。

ピンク・・・幸せを感じており、心が満たされていることが多いです。

こんな絵を描いていたら少し心配かも・・・。

背景に景色を描かなかったり、紙の真ん中や端っこに一人だけ自分を描く場合・・・孤独を感じているかも。

色使いが少ないとき・・・子どもの心の中では気分が沈んでいたり、気分の沈む何か問題が起きているかもしれません(逆にカラフルな絵は気分がよい証拠)。

親の似顔絵を子供が描いたとき・・・その描かれた親の顔が子どもが一番見ている親の顔になります。つまり描かれた親の顔が「怒っている顔」であれば、子どもが一番見ている親の顔は「怒っている顔」ということになります。

紙を目一杯使って大きく描いてある・・・多分、自分に自信を持っているのでしょう。

紙に対して小さな絵を描いてある・・・あまり自分に自信を持っていないかもしれません。

図工の指導でやめた方がいいことは?

ズバリ、子どもの活動をいちいち止め、指示通りに描かせることです。

教室や廊下に掲示してある子どもの作品を見て思うことはありませんか?

「子どもの絵がどれもよく似ている…。」

これは、先生が良い作品を描かせようと思うばかりに、「指示」→「止める」→「指示」→「止める」→「指示」の繰り返しで描かせた作品です。教師が描かせたい絵を、子どもの手を使って描かせた作品になるのです。

最初に述べたように、図工は情操教育です。子どもが自分の思うがままに作品を作れなくては作品を作っている意味がありません。

以前、そのような自由に描かせないような指導を実際に見たことがありますが、作品はどれも一定以上のクオリティです。しかし、ある子どもはたまりかねて「どうして自由に描かせてくれないの!」といキレていました。子どもの感情が正解です。

図工は子どもが思うままに絵画や工作で作品を作り上げなくてはなりません。教師の指導は当然必要ですが、指導し過ぎは絶対に良くないです。児童の技量を上げつつも、児童の情操を育てる意識が必要です。

同じような絵がいっぱい掲示されていたら、個人面談などで「どうして似たような作品ばかりなのですか?」と担任の先生にやんわり聞いてみてください。

まとめ

  1. 図工は、自分の考えや想いを絵や形にして表現する情操教育です
  2. 技能は、表現の幅を広げるために必要
  3. 作品(特に絵画)を見て、子どもの不安や不満に気づけると良い
  4. 教師の指導があまりないほうが、のびのびと作品を作れる
ABOUT ME
kodomokoukoushiyouze
元凡人小学校教員。長男の小学校入学を機に、勧奨退職(早期退職)。多くの子育て本、教育本から得た知識と20年超の教職経験、子育て経験から『主に10歳くらいまでの子育て世代』へ向けて『子育てや教育』に関する情報を発信していきます。
<