知事が学力が下がっていることを問題にしていたけれど、どうして下がったの?
島根県の丸山達也知事が「全国学力学習状況調査」の算数の結果から、「義務教育の体を成していない可能性がある」と国(文科省)を批判したというニュースが話題となりました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/48ef571c5d6bc18e0556cfbf6fa8f817e1e6c20e
算数の学力が下がったかどうかの判断が難しいけど、きっと下がっているでしょう。
まず、今回の内容は完全に個人的な見解です。
島根県の丸山知事の勇気ある発言に敬意を表します。確かに義務教育の、しかも基礎の基礎を学ぶ小学校での算数の問題で、平均正答率が55%くらいということに疑問をもたない方がおかしいです。
私の記憶では、学力低下の議論は、ゆとり教育に対する批判から出てきたように思います。
それから、文部科学省は学習指導要領を改定する(10年ごとの改定)と、学校で指導しなければならない内容をゆとり教育前に戻すどころか、大きく増やしました。
さらに、道徳の教科化、キャリア教育、小学校での外国語教育の導入、プログラミング教育とどんどん指導すべき内容を増やし、教育現場は悲鳴を上げています。その結果が、現在の教員不足です。
先ほどの丸山知事による発言に対して、インターネットユーザーは、「教員が忙しくて教材研究が疎かになり、指導が不十分になっている」という意見を寄せています。
確かに、そういった側面はあると思いますが、私の考えは違います。
算数の学力低下の1番の要因は、「問題解決学習の広がり」だと思います。
「問題解決学習」って何?という方のために、その授業方法の簡単な流れを説明します。(多少の違いは御容赦願います。)
- 問題提示(主となる問題を提示)
- 課題提示(その問題を解くためにどんな課題があるか把握)
- 自力解決(見通しをもって、習ったことを生かしながら問題を解いてみる)
- 自分の解き方、考えを他の子と共有(伝え合い、学び合い)
- 練り上げ(よりよい課題解決を考える)
- まとめ(本日学んだことをまとめる)
- 適応問題を解く(練習問題を数問解いて答え合わせ)
- 振り返り(本日の自分の学びについて振り返る※自己評価など)
このような流れで1時間を終えます。1時間に最大で5,6問しか算数の問題を解かないのです。研究授業とかでは、2,3問で終わることもざらにあります。
文科省のホームページには以下の内容が書かれています。
「主体的・対話的で深い学び」の視点に立った授業改善を行うことで、学校教育における質の高い学びを実現し、学習内容を深く理解し、資質・能力を身に付け、生涯にわたって能動的(アクティブ)に学び続けるようにすること
主体的・対話的で深い学びの実現(「アクティブ・ラーニング」の視点からの授業改善)について(イメージ) 文部科学省HPより
教育現場ではあまり使われなくなった「アクティブラーニング」という新しい学び方の考え方です。
現在、日本全国で行われている算数の授業の流れはだいたいこのようなものではないでしょうか。
この授業の流れは、10年以上前からあり、私自身は大嫌いな算数の授業です。
しかし、教育現場では、なかなか教師が教えたいように教えられず(管理職がよく授業を見に来るので)、同じような授業の流れになります。また、校内研修として「算数科」が取り上げられることが多いので、金太郎飴のように「問題解決型授業」が量産されます。
では、どうしてこの「問題解決型」の算数科が良くないのでしょうか。理由を7つ挙げます。
- 算数の問題を解く量が少なすぎる。(ドリルやスキルの問題は宿題に・・・)
- できる子はあっという間に解くことができ、暇になる。
- できない子はいつまでたっても解けずに、やる気をなくし暇になる。
- できる子はもっと問題を解きたいのに、できない子を教える役に回る。
- できない子は、クラスの子に教えられることで、自己肯定感が下がる。
- テンポが悪い授業のため、算数嫌いの子が増える。
- その結果、学力格差が広がる。(できる子は授業がダメでも結局できるので)
授業はある程度、ターゲット(学力の層)を絞って、授業を進めなければなりません。
このような授業の場合、どうしてもターゲットは「中の下」くらいになるでしょう。そうすると、できる子にとっては苦痛の時間となり、教えることで時間をつぶすこととなります。
確かに自分の知識や技能を生かして教えるという行為は、教える側にとっても頭の中を整理する機会にはなるでしょう。しかし、彼らも児童・生徒。授業の中では学びたいのです。
では、どんな授業だったらいいのか。
それは、どの学力層の子でも一定の満足が得られる授業。
基本をしっかり押さえつつ、できる子にも発展的な問題を与える授業が理想的だと思います。
問題提示や自力解決はいいとしても、その後は、解答方法を確認して、すぐに問題を解くことにできるだけ時間を割く。教科書の問題や副教材のドリルは授業中に終わらせるのが基本です。
さらにできる子に対して、少し発展的な問題を印刷しておき、答えも用意しておいて自己採点。
さらに時間が余ってしまうようなら、ここで初めて教える側に回ってもらう。
教師は採点を担当し、つまずきポイントを瞬時に指摘。(できない子のサポートでもいいかもしれませんが、採点により、子どもの理解度を把握、評価する必要があります)
そのような古いやり方では、子どもの思考力が育たないという意見をいただきそうですが、思考力とは、問題を解きながら問題(出題者)と対話をする(考える)ことで高まっていくと思います。
昔の人が思考力ないなんてことはないでしょう。むしろ昔の人の方が思考力が高い人が多かったのではないでしょうか。ノーベル賞受賞者は、結構ご高齢の方ばかりではありませんか。
「問題解決型」の授業こそが問題と考える人は少ないと思います。私も社会科や理科などでは有効な学習方法だと思います。
しかし、算数だけはたくさん問題を解いて、問題に慣れ、素早く正確に解けるようになってほしいのです。多くの問題を目の前にして、「よしほとんど解けるぞ!」と思えれば、算数好きの子どもが増えると思いませんか?