タブレット端末が1人に1台配られて、学校現場はどう変わったの?
2021年、GIGAスクール構想により、児童・生徒一人一台タブレット端末が配付され、学校現場での学習の在り方が変わりました。
果たして、このタブレット端末によって子どもの学習に対する姿勢は変わったのでしょうか。教師の指導方法に変化はあったのでしょうか。
確かに変わりました。
タブレット端末が教育現場に及ぼした影響は確かに大きいです。
教室にWi-Fiのルーターが付き、いつでもインターネットに接続できます。
そのことによるメリットをいくつか挙げてみます。
- グーグルで検索すれば、ほとんどすべてのことを調べられる。(調べる活動がより簡単に)
- 学習用のドリル等があり、自分のペースで習熟問題を解くことができる。(ベネッセさんのミライシード内ドリルパーク等)
- 端末内で発表資料を作成したり、ノートを撮影したりすることができ、簡単に共有することができる。(自分の考えを簡単にクラス内に伝えることが可能)
- 誰でも写真を撮ることができ、それを使って観察日記等を作成できる。(もう自分で描かなくてもいいんです)
- 学校を欠席しても、zoomやTeams等のソフトで教室と繋がることができる。(あらかじめ端末を持ち帰れば可能)
児童用としても大きなメリットがありますが、基本的に同じ端末を教師も持つことになるので、教師側のメリットもあります。
- オンライン(リモート)で別室と教室を繋ぐことができるようになった(都合で体育館等に集合できない場合でも、リモートで集会を実施)
- 教師が作った資料等を教室の大型テレビに映したり、児童に配付することが可能になった。(例えばプリント学習で、解答を写真に撮り、すぐに配付することも可能)
- 遠くへの出張が、オンラインで行えるようになり、出張費の削減や時間の節約につながった(このメリットは凄く大きい 特に自習体制が減った)
こう見ると、明らかにメリットが大きいです。「GIGAスクール構想バンザーイ!」「タブレット端末バンザーイ!」と手放しで喜びたいところですが、もちろんデメリットもあります(現場で感じていたデメリットですので、地方自治体によって違うかもしれません)。
- 小学校から視力を落とす子が続出すると予想される(タブレット端末は画面が10インチ程度で、使っているときの姿勢が明らかに悪く、目が近い。ブルーライトも心配)
- 一部児童が与えられた課題をせずに、タブレット端末で遊んでしまう(決まりを守らない児童が、動画を観たり、ゲームをしてしまう)
- 学級閉鎖時にも端末を使用して授業を進めるケースがある(病休者続出でも、半数以上は健康な場合が多いため、オンラインで授業をすることも・・・)
- タブレット端末の修理費が市の財政を圧迫(ICTの担当者なら分かると思いますが、国が支給してくれた端末の修理費は市町村が負担してます 子どもは端末をあっさり落とします)
- タブレット端末本体の使用期間が不透明(昨年度6年生が使用していた端末は今年度1年生が使用 1つの端末をいつまで使うのか 5年も経てば性能が不足してしまう)
- ソフトのアップデイト等でトラブルが続出(1年間に何度もソフトの更新があり、そのたびにいくつかの端末で不具合が発生)
- タブレット端末を使う教師の技量に差があり過ぎる(比較的若い教師やICTに長けている教師は自分からどんどん活用するが、苦手な方はあまり活用せずに差が広がっていく)
- ICTを指導してくれる方がいないわけではないが、明らかに不足している(月に1回2回巡回してもらっても・・・)
- ICT担当になった人が超大変(全校児童の端末管理や自治体への修理依頼、研修を担当)
- 特別教室によってはWi-Fiがないケースがある(予算の都合でしょうか?)
⑩のケースでは、こんな便利なDoCoMoのルーターが学校に支給され、電源さえあれば特別教室でもWi-Fiに接続できて便利でした。(広告です)
こう見ると、課題は結構たくさんあるけど、メリットが大きいので、タブレット端末導入はトータルとしては、よかったといえるのではないでしょうか。
オンライン授業ができれば、学級閉鎖等でも授業が進んで安心ですよね?
安心してはいけません!
世の中の人々は、タブレット端末さえあれば、「学級閉鎖、学年閉鎖、臨時休校になろうとも授業は進められるでしょう?」と思いがちです。
現実問題としてどうでしょうか。まず、インフルエンザや新型コロナウイルスによって半分の児童がお休みしていたとします(昨年度実際経験しました)。その場合、教師自身も体調不良で休んでしまうケースは少なくありません。
そうすると、担任の先生がほとんどの授業を進める小学校の場合、リモートでの授業も難しくなります。でも保護者は期待してしまうんですよね。
また、リモートの授業ってどんなイメージを持っていますか?
動画で授業のように、教師が黒板の前で話したり、板書したりするイメージでしょうか。
これは、教師によってやり方に違いがあります。
①「黒板の前で授業の内容を教科書に準じて話し、板書し、時々発問する(児童もマイクをオンにして答える)」という昔からある授業スタイル
② ①のスタイルに加え、児童をいくつかのグループ(ブレークアウトルーム)に分けておいて、その中で話し合い(ディスカッション?)をさせるスタイル(アクティブラーニング?)
③パワーポイントや動画を使い、音声+提示資料で授業を進めるスタイル(私は基本的にこれでした)
だいたいこんな感じではないかと思います。
③の授業スタイルはリモートでも授業を進めやすくてよかったのですが、準備に時間がかかり、1日にいくつもリモートでの授業があると大変でした。
また、私はノートに大小様々なプリントを貼ることをしていたので、フルリモートになると授業を進めづらかった記憶があります。
そして、はっきり言っておきたいことがあります。たくさんのリモートの授業をした経験から感じることは・・・
対面での授業の6〜8割程度の学習効果しかない ということです。
だから、とりあえずリモートでの授業を受けているから安心と期待しないでください。
「授業受けないよりはマシか・・・。」というくらいの方がいいと思います。
ノートに鉛筆よりもタブレット端末にタッチペンの方が学力上がるよね?
多分、上がりません!
タブレット端末が支給されてまだ2年半くらいでしょうか。タブレット端末によって学力が上がるかどうかというのは、これから検証されていくでしょう(文科省がすでに学習効果ありという結果を出していますが・・・)。
私の元同僚が、タブレット端末によって学力が上がるかどうかを独自に検証したことがあるそうです。
比較は、①従来の方法で漢字学習をさせたパターン ②タブレット端末にある漢字学習用ソフトによって漢字学習をさせたパターンで、どちらが平均点が高いかを比べました。
結果は、従来の漢字学習をさせたパターンの方が平均点が高かったそうです。
これは一つの例であって、必ずしもそうなるわけではありませんが、暗記関連の学習なら、ノート等に鉛筆で書いたり、声に出して読んだりする方が頭に入りやすそうですね。
読書でも、タブレットにダウンロードした電子書籍よりも紙の書籍の方が読みやすいというアンケート結果もあります。
しばらくはアナログとデジタルを用途に合わせて使い分けていくのがよさそうです。