子どもの食べ物の好き嫌い問題、どの家庭でもぶつかる壁ですよね。どのように対応したらよいでしょうか。
とにかく、無理強いはよくありません。好き嫌いはあって当然。「今はまだ苦手でも、大人になるまでには食べられるでしょう」と気楽に構えましょう。
私がちょっと前に、養護教諭の方に聞いてびっくりした話です。
「子どもの方が味覚が優れているんですよ。」
「えーっ、そんな馬鹿な!子どもは高級なフレンチよりもお子様ランチの方が好きで、単純で分かりやすい味しか美味しいと思わないような舌は、未熟そのものじゃないか!」と半ば怒りながら聞いていました。
でも後で調べてみたらその通りでした。子どもの方が味覚が優れていたのです!
舌には味蕾(みらい)という味を感じる小さな器官があり、子ども時代に発達するそうです。子どもの頃には、味蕾が約10,000個ほどあるそうですが、その数が多いほど味覚を強く感じることができます。しかし、ある時期を過ぎると減少し、30代〜40代頃には子ども時代の約3分の1まで減ってしまいます。
つまり、大人は子どもより味覚が鈍感になっているということなのです。納得はいかないかもしれませんが、事実です。
味には、5つの基本味があります。
①「甘味」は、体を動かすエネルギー源であるという情報を伝える
②「旨味」は、体を作るたんぱく質であるという情報を伝える
③「塩味」は、ミネラルがあるという情報を伝える
④「酸味」は、腐敗物であるという情報を伝える
⑤「苦味」は毒物であるという情報を伝える
①、②、③の3つの味は、生きていくために「体にとって必要な食べ物」であるという情報なので、本能的に好まれる味です。
④、⑤の2つの味は、体を守るために避けるべき「危険な食べ物」であるという情報なので、初めは受け入れられない味とされます。
以上のように、子どもは敏感な舌をもっていて、かついろいろな味に慣れていないので、本能的に、甘いもの、旨味のあるもの、塩見のあるものを好みます。逆に、すっぱいもの、苦いものは嫌います。
ただ、すっぱいものや苦いものでも体にとって害ではなく、よい栄養になるものでもあるので、食生活が進むにつれ、その味に慣れ、嫌いなものがなくなっていくと考えられます。
教育家の小川大介先生もこうおっしゃっています
「好き嫌いなく食べてほしい」というのは、「健康で強い体を育んでほしい」という親心ですね。好き嫌いが多いということで「栄養が足りなくなるのではないか」という心配の声もよく聞きますが、今この本を手に取ってくださっている方のご家庭であれば、お子さんへの愛情も食環境も十分だと思います。学校給食も充実しています。少しくらい偏食があっても、栄養が足りなくなるという心配は、ほぼないでしょう。
「自分で学べる子の親がやっている『見守る』子育て」 著者 小川大介 発行 株式会社KADOKAWA
多少の偏食は全く問題ないとのことです。私も全く同感です。多くの親は栄養面のことを考え、心配し過ぎかなと思います。
脳内科医・小児科医の加藤俊徳先生もこのようにおっしゃっています。
苦手なものを無理やり食べさせようとするのは、逆効果です。どうしても食べられるようになってほしいのであれば、細かく刻んだり、味や食感に工夫をしたりして、自然に食べ慣れさせていくほうが近道です。
足りない栄養をサプリメントで補充することもできる時代です。「食べないと大きくなれませんよ」とお子さんを脅す必要はありません。
「子どもの脳がみるみる育つ新習慣」 著者 加藤俊徳 発行 株式会社KADOKAWA
私の個人的な見解ですが、栄養は1週間くらいのトータルで足りていれば大丈夫だと思います。
例えば、卵なんかは「完全栄養食」とも言われていて、人が健康を維持するために必要な栄養素をバランスよくとることができる食品です。
アレルギーさえなければ、とりあえず卵を食べさせておけば何とかなるさと、「どーん」と構えておけばいいんですよ。
また、「BASE」という体に必要な約30種類の栄養素がすべて入った完全栄養食のパンも発売されております。私も食べましたが、とても美味しかったです。癖のない味を選んで、適度に与えれば、栄養面はもう心配いりません。
ホームページにも3歳を過ぎれば、子どもに食べさせても大丈夫だと書いてありました。
栄養の面で過剰に心配して、子どもに無理に苦手なものを食べさせるのはやめましょう。
それよりも「大切なこと」それは、家族で楽しく食べるということです。
我が子育ての師匠、佐々木正美先生は著書の中でこう言っています。
育ち盛りの子どもは、大人にくらべて肉体的な空腹感を大きく感じています。だから、お母さんの「ご飯だよ!」という呼び声を、どれほど、待ちわびながら生活していたか、多くの人々が懐かしく覚えていることでしょう。そして、そのとき食卓に並んでいた料理の味や香りの記憶とともに、母親が自分の好きなものを特に用意してくれたという記憶も、すぐに甦ってきます。
食卓で、おしゃべりが弾んだ思い出も、誰にもあることでしよう。楽しい会話ばかりとはかぎりません。悲しい話題もあったし、叱られたこともありました。
しかし、家庭のなかでいちはん会話か弾んでいたのが、食阜を囲んだときだったというのは、間違いのない事実です。子どもが幼少期であればあるほど、いちばんたくさん話をするのは、食事のときです。おいしい料理を食べながら両親と楽しいおしゃべりをかわすのは、特に幼少期の子どもにとって、非常に精神保健のいい状態の体験です。
教育の基盤や基本が家庭の中で培われるのだとしたら、そのいちばんの機会は食事の時の団欒にあると強調したいと思います。
「はじまりは愛着から」 著者 佐々木正美 発行 福音館書店
食事というものは、単に栄養をとるという行為ではありません。食卓という場を作り、その団欒によって喜びや悲しみを分かち合い、人間性の基盤を作り上げる大切なものなんです。
ですから、食事の時間は「出されたものは文句を言わずにすべて食べなさい!」と子どもにしつけをする時間はなく、食事と会話を楽しむ憩いの時間としたいものですね。
味覚の変化や食事をとる回数が増えれば経験値が上がり、嫌いだったものが何とか食べられるようになり、やがて好きになるかもしれません。幼少期の好き嫌いはその子の個性だと思い、気長に好き嫌いが減るのを待ちましょう。