教育

特別支援教室ってどうして増えてるの?

最近、特別支援教室が増えているとよく聞くけど、どうしてなんですか?

特別な支援を必要とする児童が増えているからです。

やはり発達障害のお子さんが増えているんでしょうか?

そうとは言い切れません。 特別支援教室へ行くハードルが低くなっているとも言えます

特別支援教育とは、障害のある子供に対し、多様な学びの場において、少人数の学級編制、特別の教育課程等による適切な指導及び支援をすることです。

特別支援教育は、3つの場があります。(文科省のHP参照)

  1. 特別支援学校(専門の学校 障害の程度が比較的重い子供を対象として、専門性の高い教育を実施)
  2. 特別支援教室(普通の小中学校にある特別な学級 障害の種別〈知的と情緒〉ごとの学級を編制し、子供一人一人に応じた教育を実施)
  3. 通級学級(大部分の授業を在籍する通常の学級で受けながら、一部の時間で障害に応じた特別な指導を実施)

みなさんが「特別支援教育」と聞いて想像するのが②の特別支援教室ではないでしょうか。

文科省の調査によると、特別支援教育を受けている児童・生徒の数は10年ほどで約2倍になっているそうです。

確かに特別支援教室の在籍児童は増えています。しかし、障害をもっている児童が増えたかどうかは、何とも言えません。

ただ、これだけは言えます。特別支援学級に入るハードルは昔に比べるとうんと下がりました

ちょっと前なら、地域(中学校区)に1校くらいしか特別支援教室を設置している学校がありませんでした。そのため、学区外のところからでも保護者の送迎によって通っていた児童が多かったようです。

しかし、特別支援教育の充実を図るため、どの学校にも特別支援教室を置くようになってきました。すると、特別支援学級に入りやすくなりますよね。(ちなみに、この特別支援教室の増設により、そこで指導する教職員の確保が必要となり、教員不足の一因となりました)

特別支援教室の教職員定数配置は、知的障害あるいは情緒障害の学級それぞれ児童8人ごとに1人ずつです。通常学級は児童35人(40人)に1人ですから、少人数での指導が可能になります。

これはどういうことかというと、ある特別支援学級に知的障害の児童が9人、情緒障害が3人いたとします。すると必要な教員数は知的障害2人+情緒障害1人の計3人です。12人を3人で指導できるので、かなり手厚いといえます。さらにパートタイムの支援員が1人つくこともあります(市の予算内での加配)

この手厚い指導体制のために、本来通常学級で大丈夫な子も特別支援学級に通うケースは実際増えています。「どうしてこの子が特別支援学級にいるんだろう?」という子がだいたい3割くらいはいます(学校の実態次第では、多かったり少なかったりします)。

逆に通常学級に在籍している児童の中には、「この子、特別支援学級に行った方がいいんじゃないかな」と思える子がだいたい1~3人はいます。

つまり、特別支援学級と通常学級の境目が分かりにくくなっているのです。

通常学級にいる障害があるだろうと思われる子を、例えば強制的に特別支援学級に移籍させることができれば、特別支援学級の在籍者数はもっと増えるはずです。それだけ、通常学級で児童、教師共に苦労している児童が一定数いるということです。

特別支援学級では、通常学級とは違う「個別の教育支援計画」が立てられ、保護者と面談を重ねたり、関係機関等と連携を図りながら指導を行います。

私が今まで見てきた感じでは、比較的のんびりと学んでいた子が多かったです。学力的に優れた子は、その子が選んだ通常学級との交流の授業に多く行ってました。きっとそれが精神的な落ち着きにつながったのだと思います。

特別支援学級にはどうしたら入れるのでしょうか。

そもそも、どうすれば特別支援教室に通えるのでしょうか。幼稚園や保育園に通われていて、1年生から特別支援学級に入りたい場合には、まずその園に相談してください。適切な手続きについてサポートしてくれるはずです。または、その市町村の教育委員会にお尋ねください。

また、学校に通い始めてから、「やっぱり特別支援学級の方が子どもにとってよさそう」と思ったら、その学校の教頭先生か特別支援コーディネーターに相談してください。親身になって相談に乗ってくれるはずです。

周りの子と比べて、「かなり学力的に遅れが出始めてきた」「30人以上の集団行動にどうしてもついていけず、精神的に苦しそう」などが子どもの様子から感じられたら、遠慮なく相談すればいいと思います。最終的に支援学級に入るか入らないかは保護者の判断です。

大雑把な通常学級から特別支援学級への学籍変更の流れです(自治体によって違います)。

  1. 保護者が特別支援学級を希望する(学校や教育委員会に相談)
  2. 保護者が就学支援委員会での審議の依頼し、教育委員会が就学支援委員会の調査員を派遣依頼して、該当の子どもの調査(授業中の様子を見学)をする(※以前いた学校では教頭先生がされていました)
  3. 保護者が児童精神科に子供を連れて行き、診察を受ける
  4. 保護者が教育委員会の担当者と面談し、子供は検査を受ける
  5. 就学支援委員会が開かれ、審議をする
  6. 「知的(情緒)の特別支援学級が適切である」という判定を受ける
  7. その学校の特別支援学級に入る(通常学級の学籍から外れる)

私は教職生活20年間の中で、ほぼ通常学級の担任をしていましたが、様々な特別支援学級の児童を見てきました(交流で関わりがあるので)。

いろいろなタイプの児童がいます。例えば、情緒的に安定していないけど(よくキレる)、学力はその学年で1番(全国学力・学習状況調査の結果による)の子、通常学級では、常にイライラしていたが、支援学級に入ったら、落ち着いてとても前向きで後輩想いになった子、在籍中1度も話しているのを聞けなかった子などなど、実にバラエティに富んでいます。

まだ就学前で、入学時したら特別支援学級に自分のお子さんを通わせるか迷っている方、一度機会を見つけて(学校公開日など)見学してみるといいと思います。自分が小学生だった頃の「特殊学級」とはかなり違っているはずです。

通常学級の授業を、教科に分けて受ける「交流」という形で通常学級を行き来している子も多いです。

私が昨年度教えていたある児童の平均点は80点くらいで、通常学級の平均点とほぼ変わりませんでした。全く問題がなかったです。

逆に、特別支援コーディネーターから特別支援学級へ入ることを勧められているのに、保護者が認めないケースも多くあります。その場合、保護者の判断が最優先なので、通常学級のままとなります。

しかし、児童にとってはすでに限界に近いケースがあり、授業中は完全に「お客様」になっていることがあります(ほとんど学習効果が見られない)。

その場合児童にとってはほぼデメリットしかありません(私の個人的な見解ですが…)

もし特別支援学級に在籍し、その子に合った指導が受けられたのなら、もっと伸びる要素がたくさんあります。何より本人が精神的にキツイと思います。

通常学級での友達関係も、選択した教科ごとの授業や行事等の交流を考えれば大丈夫です。休み時間に校庭で一緒に遊ぶこともよくあります。

また、特別支援学級は少人数で1年生から6年生までが集まる異年齢集団となりますので、この面のメリットが大きいと思われます(私個人ではこれが一番のメリットかなと)。

いずれにせよ、特別支援学級はもはや「特別」ではありません。特別支援学級を検討されている保護者の方。その子が最も居心地がよく、能力全般がより伸びる環境となるのはどちらか、考えてみる必要があると思います。

ABOUT ME
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元凡人小学校教員。長男の小学校入学を機に、勧奨退職(早期退職)。多くの子育て本、教育本から得た知識と20年超の教職経験、子育て経験から『主に10歳くらいまでの子育て世代』へ向けて『子育てや教育』に関する情報を発信していきます。
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